指揮者のひとりごと1

「土田さんの合唱への思い」
土田和彦さんは第4回、第5回定演の指揮者で、私世代の第9回、10回の団存続危機の時にも客演指揮としてお世話になった大先輩です。
その土田さんがFaceBookで65年以上に渡って指揮されてこられた神戸市職員合唱団「こおるぺっこ」(土田さん命名)を引退されたとのことです。引退後も音楽への飽くなき探究で現在も神戸のシルバーカレッジ音楽文化専攻クラスに通われて勉強されているとのことです。
今回の引退後に今までの合唱指揮者として合唱音楽と指揮に関するご自身の熱い思いをFBで「指揮者のひとりごと」として10数回に分けて書かれておられます。合唱と指揮に関する土田さんの思いは現在合唱をされている方々にも参考になるのではということでご紹介させて頂きます。毎回長文で文章がまとまっていませんとのご本人言ですが、土田さんの承諾を得ましたのでその中から一つずつご紹介してゆきます。

指揮者のひとりごと…振りの基本…その1
 今日から暫くはこれまで私が指揮者として色々な曲を練習し演奏するにあたって気を付けてきたこと、そして指揮者として自分に言い聞かせてきた大切な事柄など、思いつくままにお話ししていきたいと思います。どうか気楽に読み流してください。
 私は常々「指揮者とは?」と自分自身に問いかけてきました。そして常に団員あっての指揮者であると思ってきました。合唱団員という素晴らしい仲間がいなければ一人で腕を振り回している変なおじさん…ハイサイ今は爺さん…ですし、誰かに通報されてしまうかもしれませんね。
 そんな私が前に立つとき一番大切にしてきたことは、団員の気持ちを大切にし楽しんで歌ってくださるよう練習に臨むようにしてきました。だから練習も出来るだけ楽しく、そして知らない間に団員の皆様にも自分の技術が少しでも向上していくようにと考えてやってきました。
 練習の成果として演奏がうまくいったときは、全団員の心が一つになって指揮者の想いを受け止めて醸し出した素晴らしいハーモニーによるものであって、団員全員の成果…技術的纏まり…であること。指揮者はそれを導き出す役割を果たしたのみに過ぎないということ。逆に失敗したときは指揮者が団員の素晴らしい心を引き出し纏められなかったということであり、一に指揮者の責任であるということをしっかりと認識しなければならないということです。
 何より大切なことは、すべての団員に如何にすれば合唱というものを理解し、歌うことが大好きになってもらえるかを大切に思ってやってきたということです。だから練習中も冗談も入れながら私の合唱音楽への想いを伝えるようにしてきました。私は合唱団の面々が楽しく和やかに、そして優しく温かな気持ちで集うことを念頭に置いて練習に励んできました。そんな合唱団ですから団員の皆がお互いに助け合って難しいところを克服し少しずつでも向上し歌うことが楽しみになる、そんな和やかな合唱団を目指してきたのです。だから〝来る者は拒まず去る者は追わず〟で常にオープンな合唱団を心がけてきました。追々ですがそれらのことについてもお喋りしてみたいと思っています。
 さて、今回は私が指揮者として常に向き合ってきたことについて、前に少し触れましたが〝指揮者は生涯勉強である〟ということからお話してみたいと思います。
 どういうことかと申しますと、まず自分の〝指揮の技術に満足するな〟と言うことです。自分が嘗て学んできた指揮法…身に付けた技術…は、言ってしまえばそれだけでは巷の団員の皆さんには通用しない、と言うより求められていることに応えきれないだろうということです。
 若かりし頃がむしゃらに学び身につけてきたはずの振り方、それは例えば学生指揮として同じ仲間同士で支え合いながらああでもないこうでもないと意見を出し合って、ほぼ毎日練習を重ねて創り上げた時代の振り方では、今集まってくださった仲間である団員の求める振り方とは大きな違いがあるのではと思っています。
 私たちのアマチュア合唱団では殆どが毎週練習出来るということはなく、ほとんどの合唱団は月に2回乃至3回の練習に集まってくる、それも仕事の都合で毎回出席できる団員がどれほど居られるでしょうか。それだけに出席された団員は少しでもしっかり歌って帰りたいと思われているのが普通ですね。そうであればその練習で振る指揮者は自分の振り一つで曲への想いをしっかり伝える事が大切になってきます。指揮者が指揮の技術を確立していないと大事なことが団員には伝わらないと言うことになって、只だらだらと歌っていても詰まらないということになってしまいます。
 従って指揮者は常に自分の振り方を研究し、どう振れば曲の情感を伝えられるか、どうすれば団員の歌い方に指揮者の想いを重ねて表現できるかを試行錯誤しながら…一つの表現を示す振りは毎回同じ形であることを忘れず…自分を励まし研究を怠らず指揮の形を確立させることが大事なのです。そしてそのために大切なことは指揮の基礎…振り方の基本…をしっかり身に着けておかねばなりません。
 私も若い頃から今まで色々な指揮法の勉強をさせて戴きました。幸い私の青春時代を過ごしたのが京都だったので、その頃は京都市立音楽短期大学の若い先生たちが情熱を燃やして市民のためにまた学生のために色々な講座を開いてくださっていました。
 例えば「合唱市民講座」とか「市民のための合唱指揮者講座」、「学生指揮者講座」「学生のための合唱音楽講座」など、日を変え週を変えほぼ毎日何かの講座が開催されていました。私はそれらの講座に片っ端から参加させてもらい学び取ってきました。
 更に私の所属する大学の合唱団でも講師をされている先生にお願いしてボイストレーナーを引き受けて貰ったりしていました。私も個人的に指揮法を習ったりで毎日どこかで学び指揮法の真髄を吸収しようと必死でした。そしてそこで学んだ指揮の基本…振り方・指示の仕方…は、それ以降私が振っていて気になったときや迷い悩んだとき、その初心の時点に戻って振りの基本練習を続けることで迷いから脱したり、ちょっとした癖が付いたときなど元に戻すときにも大いに役に立ちました。
 指揮者としての想いを纏めるという気持ちで書き始めましたが、初回ですので色々と書きたいことも沢山あってちょっってしまいました。今回はこれまで・・・。

user.png C17 藤山 time.png 2024/11/17(Sun) 23:43 No.644
Re: 指揮者のひとりごと1
藤山さん、土田さんの「ひとりごと」を取り上げていただきありがとうございます。
私も合一会役員を長い間やってきたので土田さんとは何度かやり取りをしたことがあります。心から合唱好き先輩だと思っております。
これからの連載記事を楽しみにしております。
user_com.png C77年卒 石田 time.png 2024/11/18(Mon) 05:11 No.645
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