指揮者のひとりごと3

指揮者のひとりごと…振りの基本…その3
 前回は日本の音楽教育の現状と合唱音楽についての私の思いを中心に書いてきましたが、今回は具体的な振りの基本に関わる方法をひとつご披露申し上げたいと思います。
 もう少し後でまとめてと思っていましたが前回の投稿に対する桧垣さんからのコメントにありましたように、私が若かりし頃に最初に教えられた振りの基本中の基本について触れてみたいと思います。
 まず振り方の基本…基礎…である「腕の力を抜く」ことについて、私が一番気にいった具体的な練習方法をお話ししておきましょう。それはいろいろな教本に書かれている指揮法…三拍子や四拍子…の勉強の前に、最初に身に着けるべきこと…基本の基本…だと思うからです。
 その方法とは、両腕を前に静止してそこから振り下ろし素早く元の場所に戻す練習を繰り返すといった単純な動作を何度も繰り返すことで腕に力が入らず…どれほど振り続けても…疲れない振り方を習得することです。その時腕が下の位置に到達した瞬間に力を入れて直ぐ…瞬時に…その力を抜いて打力…反発力…で元の場所に戻す練習です。静止状態から振り下ろすときも下の位置から上がるときも腕に力が入っていない状態でなければなりません。
 もう少し解説すれば、上の位置から力を抜いて…地球の引力だけで…腕を落とし下の位置で打ち上げる瞬間、腕…指の先…に力を与え反動で上に跳ね上げるということです。その時入れた力は瞬時に抜かねばならないことは言うまでもありません。初めは中々自分の腕であるにも拘わらず力を抜くと言うことが難しいのですが、だんだん慣れてくるとコツがわかり出来るようになります。
 もう一つヒントを出しておけば、多分皆さんは公共の乗り物に乗ってお出掛けになると思いますが、その時もしも席が空いて無くて立たねばならなかったら乗り物の吊り革を持って立たれると思います。ちょと時間があるときはその吊り革を持った状態を利用して腕の力を抜く練習をされるととっても効率よく腕から力が抜ける体験が出来ますので、試してみてください。私も学生時代この方法でいち早く腕の力を抜くことが出来ました。
 私の学生時代は京都市の市電や市バスをよく利用して、乗ったらすいていても立って吊り革を持ち、そこからパッと手を離し腕を下に落とし胸の前辺りで瞬間力を入れ直後にスッと抜いてその反動で元の吊り革のところに戻す動作を…乗客の奇異の目も気にせず…何度も繰り返していました。ちょうど私の通学路線が京都駅から北の端、北大路線までなので相当の時間練習が出来たものです。
 最後になりますが腕の力を抜く振りの練習で忘れてはならないのは姿勢です。しっかり前を向いて立ち…体幹を伸ばして…腕振り練習のときに振るのは肘から先で行い、決して腕の付け根から振らないことです。肘は自分の身体の両脇に脇腹から少し…握りこぶし1~2個分程度…間隔を保って固定するようにし、そこを支点として指の先までを一直線に…指揮棒の役割があると認識して…振ること。
 そうしてもう一つ大切なことは、決して手首や指先をくねくねと折り曲げるように動かさないことです。何故なら手首や指先だけをペコペコ曲げることはそれら…いろいろな関節のすべて…が支持点になるので、団員はどこを…それぞれ複数が動くので時間的感覚が異なるので人によりタイムラグが出る…支持点とみて確認すればいいのか迷ってしまいますし、団員それぞれが違う所で指示…テンポも…を感じ取るので収拾が付かなくなってしまいます。肘から人差し指の先まで一直線に伸ばし、その途中のどこをも折り曲げない…肘から先が真っ直ぐの一本の指揮棒と見なして…振りが出来るように何度も何度も練習を繰り返すことが大切です。
 最初にしっかりと頭に置いて振りの基礎を身に付けることは、後々の指揮法に迷ったときなどにもう一度この振りの基礎に戻ることで問題解決の道が開けますし、基本に戻ることでそこから改めて正しい振りの方法を見いだせると思いますので、是非覚え込んでくださいね。
 今日は一つだけご披露させていただきましたが、お分かりいただけましたでしょうか?まだまだいろいろありますので少しずつお話を進めていければと思っております。

user.png C69卒 藤山 time.png 2024/11/23(Sat) 19:38 No.651
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