指揮者のひとりごと6

指揮者のひとりごと…振りの基本…その6
 私の振っていた合唱団の団員に「私に振ってほしい曲はどんなものが良い?」と聞くと、よく「組曲のようなものが良い」と言われます。
 それは私が〝音楽は哲学である〟ということを言ったりステージ構成では物語を設定して曲の順番を考えるといったことを訴えるので、皆さんもそれに慣らされたのか?それとも私がそういったものを好むのではないかといった憶測から提案してこられるのでしょう。確かに私はステージのあり方を一連の繋がりのある物語…情景の展開…を考え、それに従って曲の持つ雰囲気…曲想…を当て嵌め展開することで、歌う側も聴く側もひとつのステージ進行を物語の展開として理解してもらえるだろうし、曲の繋がりも違和感なく受けとめられると考えているからです。
 それから言うと組曲はそれ自体に曲の繋がりがあるしひとつの物語としての展開が設定されているので、ステージとして取り組みやすいので、私も色々な組曲を取り上げ演奏してきました。
 次によく言われるのが「叙情歌曲を振ってほしい」というようなことです。これも私の心情から〝やさしくあたたかな〟雰囲気が好きですし合唱団自体の雰囲気もそうあってほしいと願う気持ちが団員にも理解されて、知らない間にそんな合唱団を目指して皆が集まって来てくれたからかもしれません。
 そして私の振る曲の殆どが…厳しく深く追求する哲学的解釈を必要とするものも多いのですが…甘く優しい雰囲気の曲を、たっぷりと気持ちを込めて…時には情熱的に迫るようにHigh Tempoに仕上げたりもしますが…ゆったりと歌い上げるように纏め上げるからかもしれません。
 確かに、私は好んで大中 恩の曲をよく取り上げてきましたし、一番好きな作曲家である訳ですから必然彼の曲が多くなるのも当たり前のことなのです。彼の人間性、とっても素敵な紳士なのですが、子供の心を持ち続けているとってもお茶目で楽しくって人の心にスッと入り込んで、人の弱点やマイナスの部分も諧謔そのもので笑い飛ばしてくれる。そんな彼の人柄…そのものに滲み出ているので…に惚れ込んで好んで取り上げ歌い続けてきました。
 また高田三郎の組曲もよく取り上げステージに乗せてきました。これも〝音楽は哲学である〟の証なのでしょう。彼の曲は追求すればするほど更に深い意味合いをもって私の心に問いかけ人生の深淵を詳らかにするように問答を仕掛けてきます。従って何度取り上げても常に新鮮な気持ちで立ち向かえるのです。
 先に書きましたように、私はよくステージの曲順を考えるときひとつの物語を設定して、それに従ってステージを盛り上げ収束させていくように曲を散りばめていきます。
 あるときは人の一生を誕生から臨終までを、一人の人間がどのように成長し人生を謳歌しまた衰退し終えていったかに当て嵌め、あるときは自然の変化に従って時を刻む情景を当て嵌めたり、時には私の人生を振り返ったりと、その時の曲の持つ雰囲気により色々な物語を、生命の神秘や自然の驚異と畏敬、神の愛や仏の慈悲などそれぞれのテーマを想定して纏め上げてきました。
 これらの物語・テーマは、人が生きることへの応援歌として…声高に語るのではなくやさしく静かに心の中に流れ込み、あたたかなぬくもりを宿して…何時か知らない間に、ステージで歌われていたあの曲の優しく温かなメロディが、心の中に蘇ってきてずっとリフレインしながら心慰められ、もう一度頑張ろうという気持ちにさせてくれるといったことになればいいなとの願いを込めて歌い上げたいといつも思って振っています。
 こういった私の考えから先に言った〝音楽は哲学である〟ということを良く思うのです。音楽は直接的な働き方は出来ないかもしれませんが、いつか何の時だったか忘れたけれどずっと昔に聴いたあのメロディに癒やされ励まされたりした、といった効果はあると思っています。だから出来るだけやさしくあたたかくそして静かに人の心に流れ込むように…詩を語り、哲学書を開くように…歌い上げたい。それがいつかあるときに想い出されて人の力になればいいと密かに思っています。

user.png C69卒 藤山 time.png 2024/12/14(Sat) 01:06 No.666
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