指揮者のひとりごと4

指揮者のひとりごと…振りの基本…その4
 前々回では日本の音楽教育についての個人的な一所見…大変大きく出ましたが…を書いてみましたが、合唱界における問題はそれだけではありません。
 以前にも触れましたが「演奏会がうまくいったとき、その成果は団員全員の努力の賜であり決して指揮者ひとりの成果ではない」という趣旨のことを書いたと思います。言い換えれば、私は常々〝指揮者は謙虚でなければならない〟と思っています。
 指揮者が傲慢になったり偉そうに上から目線で教えてやっているといった態度をとることは以ての外です。そんな指揮者の態度が感じられれば団員は面白くないだけでなく指揮者を信頼できなくなり、やがて離れていきます。
 また、周りからの色々な声を敏感にキャッチしその中から自分の指揮の技術に関しての批判を素直に受けとめ改善するところはどこかをしっかり掴み取り見直し、初心に戻って振りの練習に励むことです。特に身内からのヨイショ…好意的なおべんちゃらは慢心の元…は聞き流して厳しい批評ほど大切にしなければならないと思っています。そこにこそ自分の弱点・技術的未熟が指摘されていると有り難く受けとめ反省を込めて技術を磨いていかねばならないのです。
今日は少々耳の痛い話になる方も居られると思いますが、それらのことについて関連するところを触れてみたいと思います。
 私たちは学校で専攻してきた学問についてその総てを習得しプロとしての知識や技術を完成し身に付けて…卒業という切符を手に入れて…きたわけではありません。しかし中には卒業を持ってすべての知識や技術を修めプロとして活躍できると思い込んでいる人も居られるように思います。でも多くの場合は学び取った筈の知識・技術のある部分においては全くの素人と同じかそれ以下である場合もあるのではないでしょうか。
 例えば音楽大学…院…のピアノ専攻(科)卒業ですべての人がプロの演奏家として成功しているわけではありません。寧ろ演奏会で素晴らしい演奏が出来るのはその内の数えるほどでしかないのです。また声楽科を出てもプロの声楽家として人々に感動を与える演奏が出来るのもまたほんの数人なのです。声楽科を出ただけで所属する合唱団でソロを歌っても指揮者の求めるような繊細な演奏が出来るとは限りません。曲の終りのdecrescendoが持たずに途中で大きいままブツリと切ってしまうようなプロ…本当に声楽コースを出たの?…とは思えないような人もいますし、況してやご自分の専攻でないものに関しては基礎…基本的な技術…も身についてない場合が殆どです。
 特に指揮の場合は大学などに指揮科専攻といったコースが設置されているところは少なく、殆どのプロの指揮者は学生時代または卒業してから指揮に興味を持って個人的に専攻…専門家に付いて猛勉強…して獲得される場合が多いのです。
 また、特に巷の合唱団…街のアマチュア合唱団の場合は尚更…では、正式に指揮法を…独学にしろ先生に付いてにしろ…深く学んだ経験のある指揮者は少ないのではないでしょうか?・・・小学校や中学校のPTAコーラスやそれが元となって作られた女声合唱団の場合は特にメンバーの中から少し楽譜が読めるとかちょっと人より歌がうまい、音楽の勉強をしてきたというだけで前に推されて立たざるを得ないといった形で已むなく指揮を執っている方も多いのでは?・・・にも拘わらず、ある意味私たちの周りにもちょっと齧っただけの知識や技術でもって自分の知識・技術は完璧であると…無謀なプロ意識で上から目線の…過大な自信を持って人の前に立つ人物も居られるわけですから、幾つになってもしっかり学ぶことは大切だと思います。人それぞれではありますが・・・。
 私は、そう意味でも指揮者とは一生学びの姿勢を怠ってはならないと思っていますし常に謙虚でなければならないとも思っています。況して慢心することは絶対に避けなければならないと強く思っています。
 そして途中で迷ったとき、団員からよく解らないと言った言葉が出たとき、私が学生時代に学び取った初心に戻って指揮の基礎・振りの基本を何度も何度も繰り返し学び直すことが大切だとの認識を持ってやってきました。またあらゆる機会を通じて指揮法に関する勉強が出来る場を求めて、自腹を切ることを躊躇せず…金銭的にも時間的にも…学ぶことに貪欲でなければならないとも思っています。
 指揮者はまた自分に〝過分な自信を持ったとき、それは堕落の始まりであり指揮者としては失格である〟と思っています。もしそうなったら、その時点から指揮者としての資質は地に落ち、所属する合唱団は衰退・消滅に向かってなだれ落ちる運命を背負うことになってしまうとも思っています。だから指揮者の資質が最も大切だと常に自分に言い聞かせ、技術だけでなく情緒を…繊細な感情の機微・万象の有り様を繊細に感じ取る心を豊かに…学ぶことに貪欲でなければならないとも。
 私のこのような思いは今の時代には受け入れられないものなのでしょうか?

user.png C69卒 藤山 time.png 2024/11/29(Fri) 01:12 No.656
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